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漫画狂いが移るブログ なつかし漫画 赤塚不二夫の「おそ松くん」

 

おそ松くん (1) (竹書房文庫)

おそ松くん (1) (竹書房文庫)

 

 赤塚不二夫は、私の少年時代、間違いなく、ギャグ漫画の神様だった。「おそ松くん」「もーれつア太郎」「天才バカボン」など彼の漫画世界から放たれる笑いは、センスもよく幸福感に満ち溢れていた思い出がある。しかし「天才バカボン」の後期から、自分自身もギャグ化するようになって、少年たちの心は、赤塚の漫画世界から急速に距離を置くようになる。成人になった今でこそ、彼のシュールなギャグセンスに感嘆するが、当時の子供たちには、ついてけないギャグ漫画に思え、赤塚信奉者が子供読者からは、激減していくのである。その後は、赤塚の酒の上での奇行が話題になり、漫画家としての赤塚は堕ちた!と、当時の少年であった私は思っていた。それは、輝いていた時代の赤塚不二夫のギャグ漫画を愛すればこその裏返しの思いでもあった。

ともかく、この「おそ松くん」は、そんな赤塚不二夫が最もギャグセンスに輝いていて子供たちに熱烈に支持を得ていた時代の傑作ギャグ漫画である。思えば、寺田ヒロオを除けば、トキワ荘出身の漫画家たち、手塚治虫藤子不二雄石森章太郎たちは、勤勉に映画を見て、小説を読んで、音楽を聴いて・・それらを自分たちの漫画に巧く消化して、数々の傑作漫画を生み出していた。赤塚不二夫の「おそ松くん」は、その最たる漫画であり、赤塚の映画愛が巧みに描かれて、ギャグ漫画なのに、時にはホロリと涙するストーリーもあり、まるでチャップリンの映画を見ている気持ちにさせられることもあった。「イヤミはひとり風の中」は、「街の灯」へのオマージュであり、「下町のチビ太キッドの物語」も映画そのもののような漫画で、涙なしには読めない素晴らしい漫画だ。初期こそ、6つ子が織りなすドタバタコメディの漫画だったが、チビ太、イヤミ、デカパン、だよーんのおじさん、ハタ坊など、まるでディズニー漫画のように次々と魅力ある特異なキャラクターが登場するにつれて、ギャグセンスが超加速して、おそらく、当時では一番面白い漫画だったと断言できる。特に赤塚が天才なのは、言葉のセンスである。子供は面白い言葉に敏感に反応する。それを巧みにとらえて、「ざんす」「だす」「だよーん」「だじょー」とか奇妙だが記憶に残る言葉を新しいキャラクターたちに喋らせ、子供たちの圧倒的な支持を得たのである。特にイヤミの「シェー」は、振り付けも、覚えやすく傑作で、イヤミ先生がおそ松くんの家で、お父さんとお母さんのキャラクターが入れ替わってしまったアクシデントを目撃し、靴下をびょーんとさせて、「シェー」をしまくる回の漫画は、何度読み返しても、未だに笑いで涙がでてしまうほどだ。ギャグ漫画の衰退が叫ばれて久しいが、ギャグ漫画を目指している人たち、あるいは本物のギャグ漫画を読みたいと思うひとたちは、この「おそ松くん」を是非読んで欲しい。赤塚不二夫がいかに偉大なギャグ漫画だったかが、よくわかると思う。

敢えて言うなら、ギャグ漫画の名作だ!必見!