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芝居狂いが移るブログ 鴻上尚史「朝日のような夕日をつれて2014」

 

朝日のような夕日をつれて 21世紀版

朝日のような夕日をつれて 21世紀版

 

昨年の夏は、この年を代表する芝居 が立て続けに上演されたが、その中で、私が最も楽しみに期待して、見たのが新宿紀伊国屋ホールで上演された「朝日のような夕日をつれて2014」である。私は鴻上氏の作品の大ファンであるが、本作品は、その中でも群を抜いてリスペクトしている作品だ。第三舞台が存在していた時代、劇団の節目節目で上演されており、その全てが期待を違わぬ舞台だったと思う。特に91年の大高洋夫小須田康人筧利夫勝村政信、京晋介バージョンの朝日は大好きで7回見た記憶がある。2014年の舞台は、実に17年ぶりの再演で、大高洋夫小須田康人も50代を迎えての再演であり、第三舞台解散後の初の朝日でもある。最初に再演の情報を知った時、今まで、数々の「朝日のような夕日をつれて」を見てきた、その時の感動、言葉では言い表せない熱い思い、わくわくしながらも大笑いした数々のこの芝居への思いが怒涛のように甦ってきた。そして2014年の朝日はどうなるんだろうという不安と期待が混在した思いで、初日を迎えたのだ。大高洋夫小須田康人は、17年経っても奇跡的にテンション高い動きは健在で、しかも二人とも役柄が実年齢に近くなったこともあり、演技の深みが強く感じられた。特に芝居の後半に、ウラヤマとエスカワが朝日のような夕日を静かに語り合う場面は、今までの朝日の中で一番熟成された感動的な名場面だった。エスカワの小須田康人が進化の話を語る場面は、秀逸の美しさだった。研究員、マーケッター、少年を演じた藤井隆、伊礼彼方、玉置玲央の三人も各人大熱演で今回もまたメモリアルな芝居となった。私個人にとっても、大高洋夫小須田康人の朝日を見れるのは、これが最後かもしれないという思いで見たせいか、今迄見た「朝日のような夕日をつれて」より感傷的な気持ちがあったのだが、最後の群唱で5人の男たちが「朝日のような夕日をつれて 冬空の流星のように ぼくはひとり」という台詞と共に立ちつづける、その姿を見ると、そんな感傷も吹き飛ぶ元気と希望を貰った。鴻上尚史の「朝日のような夕日をつれて」は、つかこうへいの「熱海殺人事件」のように、小劇場の芝居の歴史的な名作だと思う。鴻上氏には、このあともキャスティングを変えながらも、進化した朝日を見せ続けて欲しい。