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映画狂いが移るブログ 新垣結衣「くちびるに歌を」

 

くちびるに歌を (小学館文庫)

くちびるに歌を (小学館文庫)

 

 新垣結衣主演のさわやかな青春映画の佳作である。ピアニストとして名を馳せた主人公が恋人の死に直面しピアノが弾けなくなり、故郷の五島列島の中学の臨時教師として、合唱部の顧問をいやいややっていくうちに、生徒たちの心の交流をしながら、自分自身の内面を回復していくドラマである。

 

ここでもまた「自分から逃げるな」がテーマの根底にある。「海月姫」以降、私が見る日本映画には、「あきらめるな」「逃げるな」という若者へのメッセージが共通して見られる。これは、何かの兆候なのだろうか。演奏会の直前に木村文乃演じる合唱部の元顧問の先生が生死をきわめる出産を迎えたことに動揺し、思わず逃げようとする生徒に「逃げないで」と呼びかける新垣結衣の凛々しいまなざしが美しい。「わたしももう逃げない」と宣言する新垣結衣の台詞にこの作品の本質がある。五島の美しい街並みと生徒たちの純朴さが、時として木下恵介の名作「二十四の瞳」を思い起こさせてくれる。特に、自閉症の兄をもつ心優しい男子生徒のエピソードはじんとくる。新垣結衣、生徒たち、全員の好演がさわやかな感動を与えてくれた。アンジェラ・アキの音楽も忘れがたい。良心作だ!