芝居狂いが移るブログ 鴻上尚史「ベター・ハーフ」
下北沢本多劇場にて鴻上尚史の「ベター・ハーフ」を見た。今までの鴻上作品と明らかに趣が違う。透明感のあるストレートな芝居で、新しい鴻上作品を見ることが出来た。これは嬉しい体験だった。
テーマは、鴻上氏がエッセーでよく書いている「恋愛」なのだが、人と人のコミュニュケーションの本質をきちんと押さえて描いており、胸をうつ内容となっている。登場人物は、風間俊介以下4名だけで、その中での濃密な恋愛模様が時間の経過とともに、流れるように描かれており、まるで村上春樹の小説を読んでいるようなポップな気持ちにさせられる。中村中演じるトランスジェンダーで悩む女性の描き方も、ナチュラルに演出しており、ここは鴻上氏の演出の冴えが光る。おそらく、今までの演劇で、トランスジェンダーについて、ここまで、ナチュラルに表現したものはなかったのではないだろうか。鴻上氏にとっては、男性、女性というより、大切なのは、「人」と「人」なのだということなのかと思う。主人公の風間俊介は、もちろんだが、真野恵里菜、中村中、片桐仁の4人のアンサンブルは絶妙で、とても楽しく素敵な芝居を構築してくれた。
芝居の中で、中村中がピアノを弾き語りながら歌う場面は、大迫力。この場面だけでも、この芝居を見る価値がある。第三舞台の地平とは、明らかに異なる鴻上作品の出現に拍手を送りたい。必見!