エンタメ狂いが移るブログ

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映画狂いが移るブログ 「飢餓海峡」

 

飢餓海峡 [DVD]

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飢餓海峡 (下巻) (新潮文庫)

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 私には、最高にリスペクトする日本映画が2つある。一つは黒澤明の「七人の侍」であり、もう1本がこの作品だ。初見は、池袋の文芸地下だった。映画の持つ圧倒的な迫力と出演者たちの鬼気迫る名演技に、しばらく席を立てなかった思い出がある。実際にあった洞爺丸の事件を下敷きに、強盗をした金で成り上がっていく犬飼多吉と逃亡中の彼を助けた娼婦との人間模様を縦糸に、犬飼を執念をもって追跡する刑事の姿を絡めながら、重厚で緊迫感のあるドラマが展開されていく。内田吐夢監督入魂の傑作であり、50年以上たった今でも日本映画のベスト5には必ずランクされる作品だ。出演者が素晴らしい!主演の三國連太郎左幸子はこの作品の演技で映画史に残る仕事をした。水上勉の小説世界を内田監督と三國、左は見事に映像化、成功した三國演じる犬飼を新聞記事で見て、一目会いたくて訪ねていき殺されてしまう娼婦の左の哀れさ、反転したモノクロ映像を効果的に使い衝撃的な名場面となっている。執念をもって犬飼を追跡する老刑事を演じた伴淳三郎は、彼の俳優人生の中でも一世一代の名演技で、この作品に凄みと感動を与えてくれた。逮捕された三國が船から入水自殺を図り彼が海に飛び込んだあと、船の航跡が映し出される中、念仏のような音楽が流れる絶品のラストシーンまで、一瞬たりとも目が離せない緊張の連続だった。映像のもつ魔力と役者の演技力で映画がこれ程凄い作品になるのだということを思い知らされる代表的な作品だ。若い時代の高倉健が刑事役を好演しているのも嬉しい。名作!