映画狂いが移るブログ スタンリー・キューブリック「時計じかけのオレンジ」
- 作者: アントニイ・バージェス,Anthony Burgess,乾信一郎
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 1977/06
- メディア: 文庫
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私が初めて見たスタンリー・キューブリックの映画である。「2001年宇宙の旅」は、この作品をみた後、見ている。オープニングの近未来の映像から、いきなりドギモをぬかれた。前知識もなく、何となく面白そうかなと思って見たのだが、見事にキューブリックの映像世界に籠絡されてしまうことになる。キューブリックは敢えてクラッシック音楽を効果的に駆使しながら暴力描写でさえ、ある種の映像美として描いており、一度見たら病み付きになる魔力がこの映画にはある。悪魔的な存在とも言える主人公にマルコム・マクドウェルという最適の主役を迎え、全編ゾクゾクと戦慄させてくれる映像の連続だ。マクドウェルがジーン・ケリーの「雨に唄えば」を口ずさみながら暴力を振るう場面などブラックな要素がいっぱい。悪の限りを尽くす主人公を描いた前半と彼を強制的に更生させようと機械的拷問を体験させる後半のストーリー展開が流れるような映像美で描かれており、私はこの年に見た最高の映画だと確信した記憶がある。この映画を見たあと、アンソニー・パージェスの小説も読んだが、こちらも、衝撃的に面白い。原作の世界観を、想像以上に見事なまでに映像化している。
キューブリックとマクドウェルという二人が存在したからこそ、この映画の奇跡が生まれた、そう思う。キューブリックは、このあと、「シャイニング」「フルメタル・ジャケット」と傑作を作りつづけたが、マクドウェルはこの作品こそ代表作となった。