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映画狂いが移るブログ ジーン・ハックマン、アル・パチーノ「スケアクロウ」

 

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 アメリカの名優ジーン・ハックマンは遅咲きの俳優だ。41歳で「フレンチ・コネクション」のポパイ刑事を演じ、見事オスカーに輝くまで、渋い脇役として甘んじていた。その彼が堂々たる主演俳優としてブレークしたのが「ポセイドンアドベンチャー」であり、彼の俳優としての底力を見せつけたのがこの作品だ。私は、この「スケアクロウ」が事実上彼の代表作だと思う。粗暴で他人を信じることが出来ない不器用なマックスと若い時に妻子を捨てて船乗りになっていたライオネル、世間からはみ出した存在の二人が意気投合して洗車屋になる夢をもちながら旅をしていくロードムービーであり、都会の中の孤独を切り取っている「真夜中のカウボーイ」に通じる、アメリカの影の部分を見事に描いた映画だ。ビルモス・ジグモンドの卓越した手腕で撮影した映像は自然光を効果的に使いながら生々しくも美しい映像世界を構築しており、映像を見るだけでも胸に迫る迫力がある。ジェリー・シャッツバーグ監督の演出は、ジーン・ハックマンアル・パチーノという二人の名優を巧みに誘導し、下手な小細工などせず大地に根を張った安定感を感じる。これは、スキルを持っている俳優でないと成立しない映画だ。別れた妻子に会うことが叶わず錯乱して、他人の子供を抱きかかえて公園の池に入るパチーノ、友の異変を察知し必死に止めようとするハックマンの二人のスケアクロウを描いたこの場面は、身震いするほど凍りつく怖さだ。当時、高校生だった私はこの映画に感動して8回以上見た記憶がある。アル・パチーノはこの作品の前の「ゴッドファーザー」でブレークし、この作品と「セルピコ」で俳優としての地位を確立した。二人が一番油が乗り切っていた時に共演した作品で、もう二度とこのコンビでの映画は見れないだろう。カンヌ映画祭グランプリ受賞作品!必見!