エンタメ狂いが移るブログ

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映画狂いが移るブログ ダスティン・ホフマン「クレイマー、クレイマー」

 

 アメリカを代表する名優のダスティン・ホフマンが初めてオスカーに輝いた名作である。ベトナム戦争後、病めるアメリカを悩ませた家庭の問題である「離婚」を背景に妻に去られた夫とその息子がつむぎ合う親子の愛情を描いた名作である。それまで妻に息子の世話をまかせっぱなしでいた父親であるダスティン・ホフマンが悪戦苦闘しながら息子のために愛情を獲得していく父権回復の物語であり、仕事によってないがしろにしていた家族再生の物語でもある。公開時、映画館では、特に息子役のジャスティン・ヘンリーのけなげな名演技もあって、観客からのすすり泣きの声が絶えなかった記憶がある。かくいう私も涙なしでは見られなかった。父と息子の間で構築された「フレンチトースト」の作り方など、監督のロバート・ベントンの演出はつぼを得ており、今までのアメリカ映画だったら悪役であろう妻の葛藤も的確に描いており、またこれに応えたメリル・ストリープも見事であった。夫の立場、妻の立場、そして二人にとってかけがえのない息子の存在を冷徹な視点で描き切ったからこそ、この映画は当時のアメリカ人にとっては、切実なものとなったと思う。家族の問題は、切実で、後年、ロバート・レッドフォードが「普通の人々」で、母と息子の断絶を「フレンチトースト」の裏返しにより描いた名作を監督することになる。この作品の公開同時期にジョン・ボイト、フェイ・ダナウエイ、リッキー・シュローダー出演の「チャンプ」という、やはり父と息子の愛情を描いた映画が評判を呼んだが、私は、「クレイマー、クレイマー」の素直な演出に惹かれた。テーマ曲のマンドリンのメロディも忘れがたい。名作!