芝居狂いが移るブログ 野田秀樹「エッグ」(東京芸術劇場)
東京芸術劇場で野田秀樹の「エッグ」を見る。初演に見た言葉では言い尽くせない衝撃の度合いがさらに深まっており、この芝居の凄みがびんびん伝わってきた。東京オリンピックの2020年開催が決まり、国際情勢が不安定度を増した今だからこそ、この作品の再演の意味が身につまされるものと思え、野田秀樹の「怒りの叫び」が聴こえてくるようだった。
寺山修司の幻の戯曲から戦時中の満州世界、さらには石井部隊を連想させる細菌の研究開発をする軍事部隊と実験体にされる「マルタ」と呼ばれるアウシュビッツの囚人のような人間の存在まで、様々なキーワードがめまぐるしくも目が離せない疾走感で次々と展開していく野田ワールドは、特に今回は鬼気迫るパワーがあり、一瞬たりとも気が抜けない緊張感で満ち溢れている。妻夫木聡、深津絵里、橋爪功、仲村トオル、大倉孝二などの初演メンバーが野田の演出意図への理解をさらに深め、目を見張る好演をしてくれた。見終わった後、しばらく衝撃で席を立てない、もの凄い芝居だった。この野田の表現する世界観は、おそらく誰も再現できないと思う。改めて、野田秀樹の才能を見せつけられた。最高の傑作!