エンタメ狂いが移るブログ

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芝居狂いが移るブログ ケラリーノ・サンドロヴィッチ「三人姉妹」(シアターコクーン)

 

桜の園・三人姉妹 (新潮文庫)

桜の園・三人姉妹 (新潮文庫)

 

 前回の「かもめ」に引き続き、ケラリーノ・サンドロヴィッチ演出のチェーホフ原作の芝居第2弾である。「かもめ」も良かったが、今回はさらに、登場人物たちの人間性が深く掘り下げられており、三人姉妹を取り巻く見事な人間模様が描かれていた。

 

この芝居を見て改めて驚いたのだが、三人姉妹の三女イリーナが「モスクワへ行きたい」と叫ぶ場面に、小劇場芝居でさかんに夢の希望地へ目指そうとする作品があったことを思い出し、それと通じるものを感じ、人間のもつユートピア構想は、いつの時代でもあるものだと痛感した。三姉妹を演じた余貴美子宮沢りえ蒼井優は三人三様に個性を光らせ、見応えのある芝居となった。三姉妹に絡む、段田安則堤真一山崎一たち男優陣の好演もあり、群像劇でとしての傑作になっていたと思う。ケラ氏の演出は奇をてらうことなく、あくまで正攻法でぐいぐい押し続け、力強い感動を観客に与えてくれた。私には、まるで、「風と共に去りぬ」のようなドラマチックな映画を見ているような気持にさせられた。これは、ケラ氏の演出が、三姉妹以下の人間を描く手腕がいかに卓越したものかということだと思う。特に、宮沢りえ蒼井優の二人の演技から飛び散る火花に拍手を送りたい。

良し!